本日は2011年3月11日の東日本大震災からちょうど13年になります。
当時の震災で被災された方々および本年元旦の能登半島地震にて被災された方々に深くお見舞い申し上げます。
今日お話しするのは、企業の社会貢献についてです。
大多数の企業(特に大企業を中心として)は企業理念として『社会貢献』もしくはそれに関連するキーワードを掲げております。現在、企業活動と社会貢献は切り離せない関係になっております。
ところが昨今、過去の記事に掲載しましたが、自動車業界では『認証不正』や『下請け企業への減額強要』という事例が見られ、社会貢献に対する企業と世間とのギャップが見え隠れしている実態があります。
では、本当の『社会貢献』とは一体何なのでしょう? 恐らく、多くの企業が考えている『社会貢献』は本当のそれではないのでないか、と推測しております。
そこで、上記疑問を解くカギを得るべく、先月2月26日~2月27日の2日間、(公社)自動車技術会(略称:自技会)の公開イベントとして、『エシカル・エンジニア開発講座』という研修を受講してまいりました。
『エシカル(ethical)』とは、『道徳的な、倫理的な』という意味の英語で、最近では人や社会、地域、環境に配慮した行動を指す言葉として用いられています。この言葉はコンプライアンス(法令遵守)だけでなく、人間の道徳、倫理的側面にも踏み込んでいることに着目しなければなりません。
研修では、去る2019年大晦日のNHK紅白歌合戦において放映された『AI美空ひばり』を題材にグループ討議されました。参加者は大手自動車メーカー、大手サプライヤの管理職・リーダークラスが殆どでした。
『AI美空ひばり』については、製作技術を担当したヤマハ株式会社のホームページに掲載されておりますので、そちらをご参照ください。→特設サイトは
こちら。
『AI美空ひばり』に関して、前日(2023年9月)にNHKスペシャルにてプロジェクト概要や制作現場の様子について放映され、好評を得ていたのですが、大晦日に紅白歌合戦で歌唱が披露されたあと、大多数の識者、友人知人、一般視聴者などより賛否が分かれるという結果になりました。いわゆる制作者(NHK、プロデューサの秋元康氏)、技術(ヤマハ)の思惑と必ずしも一致しなかったと判断せざるを得ません。
ここで、なぜ『AI美空ひばり』が一部(といってもかなりの規模)の視聴者に受け入れられることができなかったのか、これを客観的に分析して、同様のプロジェクトを成功させる(もしくは商品が喜ばれる)ようにするのか、を導き出すのが『エシカル・エンジニアリング』なのです。
さて、社会貢献に話を戻しますが、企業の社会貢献と言ったときに『社会貢献』というワードに目が行きがちで、実は『企業の』『企業ができる』という部分が抜けた状態で解釈しがちなのです。これが大変重要なのです。
自技会の研修においても、『社会貢献』というキーワードが飛び交っていたのですが、企業視点での会話になっているケースがよく見られました。
例えば、クルマなどの商品にはライフサイクルがあります。商品企画から始まって、開発→生産→販売→購入→利用を通じて、最後に廃棄という過程を経るわけです。その過程で多くのステークホルダーが存在するのは言うまでもありませんね。
今回は商品を製作する企業と、商品を利用する利用者に分けて考えましょう。
企業は多くの利用者に商品を利用していただくために、統計調査等を通じて市場ニーズを推測します。それをもとに商品コンセプトを策定し、商品コンセプトに準じた商品を開発・生産します。企業の販売者は商品コンセプトを利用者に説明し、利用者は商品コンセプトが利用者の使用目的(本来のニーズ)に合致しているか判断し購入します。
企業ができることは市場ニーズを推測することであって、本当のニーズとは異なります。また、商品を選択し使用するのは利用者であって、企業はそれを妨げることはできません。
また、利用者が商品購入後、故障・異常等により、利用目的を果たせない場合もあります。その際には点検・修理等のアフタサービスも行う必要がございますし、商品が役目を終え廃棄する際には必要に応じて廃棄代行することもございます。
人間の価値観が多様化している昨今、企業ができる『社会貢献』はごく一部でしかありません。それでも利用者の信頼をつかみ、少しでも社会への貢献を高めていくには、利用者を含むステークホルダーの意見に耳を傾け、企業が出来ること、出来ないことを包み隠さず説明することしかありません。
今回は企業目線でお話ししましたが、後日利用者目線でも解説したいと思います。
※本記事の作成については、SDGsコンパス(株式会社IKUSA)HP記事を一部引用しました。→HPは
こちら。